今回は、ウイスキー発祥の地の1つと呼ばれている「スコットランドウイスキー(スコッチ)」について
どういった特徴なのか・歴史と合わせて紹介していきます。
- スコッチウイスキーの特徴・定義
- スコッチウイスキーの6大生産地の特徴
- スコッチウイスキーが歩んできた現在までのストーリー
スコッチウイスキーの特徴!

スコッチウイスキーと名乗るには、法律で定められた条件をクリアしたウイスキーのみです。
- 水・酵母・大麦麦芽およびその他の穀物を原料とすること
- スコットランドの蒸留所で、糖化・発酵・蒸留を行うこと
- アルコール度数94.8%以下で蒸留すること
- 容量700リットル以下のオーク樽に詰めること
- スコットランド内の保税倉庫で3年以上熟成させること
- 水とスピリットカラメル以外の添加は不可
- アルコール度数40%以上で瓶詰めすること
1.水・酵母・大麦麦芽およびその他の穀物を原料とすること
ウイスキーは、基本的に「大麦麦芽(モルト)やトウモロコシなど」の穀物類を原料としています。
これを、水と酵母を使いアルコール発酵させています。
- 大麦麦芽(モルト):シングルモルトウイスキーの原料。個性が強いのが特徴。
- 大麦麦芽以外の穀物類:グレーンウイスキーの原料。トウモロコシやライ麦、小麦など
2.スコットランドの蒸留所で、糖化・発酵・蒸留を行うこと
糖化・発酵・蒸留とは、ウイスキーを造る工程のことで、
「スコットランド内で作りましょう!」ということです。
- 糖化:大麦麦芽はそのままの状態では発酵しないので、でんぷんを糖分に分解する工程
- 発酵:酵母が麦汁の糖分やアミノ酸などを取り込んで、ウイスキーの香りや味わいを生じさせる工程
- 蒸留:発酵が終わったもろみを沸騰させて、蒸気を冷却、液体化させて必要な成分だけ取り出す工程
糖化によって、そのままでは発酵しない大麦麦芽を発酵できるように分解して、でんぷんから糖分に変化させる
酵母が糖分を取り込んで、アルコールを発生させる。(何百種類ものウイスキーの香りや味の成分を生じさせる)
発酵が終わった液を「醪(もろみ)」といいます。
もろみを銅製のポットスチル(巨大なやかん)に入れ、沸騰させる(アルコールが沸騰する温度は80℃)
沸騰した蒸気を冷却し、液体にすることで、アルコール濃度の高い液体ができます。
蒸留したばかりの液体を「ニューポット」と呼ばれています。(ニューメイク・スピリッツとも言う)
3.アルコール度数94.8%以下で蒸留すること
蒸留することで、アルコール度数を高めます。
その際にアルコール度数94.8%以下にしなければいけないということです。
多くのウイスキーは、67%程で、蒸留されて度数を調節して樽熟成を行います
4.容量700リットル以下のオーク樽に詰めること
ウイスキーの熟成に使用される樽は、180~500リットルが一般的で、
スコッチの熟成で多く使われている樽は、180リットルのものです。
他の国のウイスキーは、稀に大きなサイズの樽で熟成することがあります。
5.スコットランド内の保税倉庫で3年以上熟成させること
スコッチウイスキーは最低でも3年以上は熟成させなければならないので、
年数表記の無い銘柄も最低3年以上は熟成されています。
日本やアメリカ、カナダでは熟成年数の決まりは無いです。
6.水とスピリットカラメル以外の添加は不可
一般的にアルコール度数の調節のために瓶詰めの前に
水が加えられています。
「カスクストレングス」という加水処理を行わずに熟成されたウイスキーをそのまま瓶詰めする方法などあります。
カスクストレングスは、アルコール度数が高くウイスキーの個性がとても感じることができる
色調節のために「カラメル」が加えられることがある。
(カラメルが加えられる理由:熟成された原酒が毎回同じ色とは限らないので、色を統一させてクレームが出ないようにしている)
7.アルコール度数40%以上で瓶詰めすること
スコッチウイスキーの多くは、63.5%前後で樽に詰められ
瓶詰めする際に、加水処理を行いアルコール度数40%以上になるように調節します。
生産地別の特徴

スペイサイドの特徴!
スペイ川と呼ばれる大きな川があり、その流域のことを「スペイサイド」と呼んでいて、50以上の蒸留所が密集しています。
日本でも有名な蒸留所(マッカラン、グレンリベット、グレンフィディックなど)があり、
スコッチウイスキーを代表するエリアになります。
華やかで甘みのあるウイスキーが多く、ウイスキー初心者の方でも飲みやすいのが特徴です。
花の蜜のような上品な味わいで、クセが少ない印象ですね!

ハイランド地方の特徴!
ハイランド地方は、標高の高い山が連なる山脈地帯で、ウイスキー造りに適した環境が整っています。
そのため、スペイサイドの次に蒸留所が多く、有名な銘柄が造られていますよ!
ハイランド地方は広大なので、「東西南北」でウイスキーの特徴が異なります。
ハイランド地方全体で共通しているウイスキーの特徴はあまりないです。
地域 | ウイスキーの特徴 |
東ハイランド | スペイサイドに近く、華やかで飲みやすい |
西ハイランド | 蒸留所がほとんどない |
南ハイランド | ライトな口当たりで飲みやすい |
北ハイランド | 香りと味わいのバランスが良い |

ローランド地方の特徴!
イングランドが近いので、経済的に成長している地方で、ウイスキー造りよりも
技術革新が行われてきました。そのため蒸留所の数も少ないです。
スコッチウイスキーの中でも、珍しい3回蒸留を取り入れています。3回蒸留することで、雑味が消え洗練された飲みやすい味わいとなっています。
そして、モルトウイスキーよりもグレーンウイスキーの方が多く造られているエリアでもあり、
ブレンデッドスコッチウイスキーの原酒が造られていることで有名ですね!

アイラ島の特徴!
日本の淡路島ほどの大きさの島で、島民に多くがウイスキー造りに携わっていると言われています。
スペイサイドウイスキーとは、対照的な香り・味わいで「飲む人を選ぶ」ウイスキーが多く造られています。
アイラ島のウイスキーは、ピート香・ヨード香などが特徴で、燻製や潮っぽい香りと表現されることが多いですね!
ウイスキー初心者の方には、強烈なクセの強いウイスキーが多く、一部の愛好家に絶対的な人気を誇っています!

アイランズの特徴!
大小数百もの島々の中でも、ウイスキーを造っている島は、「オークニー諸島、ルイス島、マル島、スカイ島、ジュラ島、アラン島」の6つです。
スコッチウイスキーの中でもアイランズで造られているウイスキーは、特に個性豊かな銘柄が多く、個性派揃いと言われています。
島 | 蒸留所 |
オークニー諸島 | ハイランドパーク蒸留所、スキャパ蒸留所 |
ルイス島 | アビンジャラク蒸留所 |
マル島 | タリスカー蒸留所 |
スカイ島 | トモバリー蒸留所 |
ジュラ島 | ジュラ蒸留所 |
アラン島 | アラン蒸留所 |

キャンベルタウンの特徴!
かつては、アメリカとの貿易で使われていたエリアで、その当時はとても栄えていました。
しかし、アメリカの禁酒法によって、一気に衰退してしまった場所でもあります。
30以上あった蒸留所は、現在3つに減ってしまいました。
キャンベルタウンウイスキーは、港町ということもあり、「潮っぽい、磯っぽいなど」表現されることが多いです。
塩辛い味わい(ブリニー)が特徴ですね!
スコッチウイスキーの中では、クセのある方なので、ウイスキー初心者の方にはパンチが強いかも

スコッチウイスキーのストーリー

スコッチウイスキーの歴史を知ることで、さらに深く楽しむことができますよ!
スコッチウイスキーの起源
スコットランドでいつからウイスキーが造られたのかは不明ですが、
最古の文献には、「1494年スコットランド王室の出納記録に残っており、15世紀にはすでに王が嗜んでいた」とされています。
当時は、修道院で薬酒として造られていましたが、豪族や農民たちも自家用に少量を蒸留していたと言われています。
余剰の大麦を早くお金に換金するために、農家では盛んにウイスキーが造られるようになります。
スコッチウイスキーの密造時代
ウイスキーに対する課税が行われたのは、1644年。その後、1707年の内乱によりイングランドと合併することになります。
すると、さらにウイスキーに対して課税されることになり、
イングランドへの反感と課税を嫌う人々は、山奥へ逃げ込み「密造」が増えました。
(これが、19世紀初頭~1820年代まで続くことに!)
この時代に、近代のウイスキー製造工程「ピートで麦芽乾燥させる事と樽で熟成させる事」が確立されました。
- ピートで麦芽を乾燥させる:大麦麦芽を乾燥させるために近くに埋もれているピートを燃料として代用
- 樽熟成:蒸留したモルト原酒を入れて隠すのに、シェリー樽の空き樽を流用
密造時代が終息したのは、1823年に酒税法改正によって税率が下げられ、1824年以降多くの政府公認の蒸留所が誕生!
ブレンデッドスコッチウイスキーの歴史
1831年 近代的な連続式蒸留器が発明され、特にローランドの業者たちが積極的に導入した。
原材料を原価の安いトウモロコシなどに変え、工業製品とも言える「グレーンウイスキー」が誕生!
しかし、「グレーンウイスキー」は、そのまま飲むにはあまりにも風味が乏しかったため
個性的なモルトウイスキーと混ぜ合わせるようなった。これが、「ブレンデッドスコッチウイスキー」
個性の強いモルトウイスキーを柔らかくして、洗練された口当たりの良い味と香りに生まれ変わりました。
そして、均一の味わいが大量生産できるようになりスコットランドの地酒でしかなったウイスキーが世界に認められる大きなきっかけになりました。
ブレンデッドスコッチウイスキーが、それまでのウイスキーのイメージを変えました!
1880年代からは、後世まで飲み続けられるブレンデッドスコッチウイスキーが続々と誕生していきました。
シングルモルトウイスキーの歴史
ブレンデッドスコッチの全盛期では、モルトウイスキーのほとんどがブレンデッド業者に売られていました。
そんな中、「グレンフィディック蒸留所」がシングルモルトウイスキーとして販売を開始!
疑問視されていたが、予想に反してシングルモルトウイスキーが売れた。
シングルモルトウイスキーのハッキリとしたアロマやフレーバーが好評だったよう
ブレンデッドスコッチウイスキーが全盛だった時代では、モルト蒸留所で造られた原酒の売り先ののほとんどが
ブレンデッド業者でした。
品質の高いモルト原酒が求められていた時代に蒸留所ごとに多様なシングルモルトが誕生していきました。
そんなブレンデッドウイスキー全盛期に、1963年「グレンフィディック蒸留所」から
世界で初めてシングルモルトウイスキーとして販売され、意外にも好評だったため
1980年代には、多くのシングルモルトウイスキーが以上に出回るようになりました。
本日のまとめ
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
今回は、「スコッチウイスキーの産地による違いや法律で決められている定義・ウイスキーの長い歴史」を書かせていただきました。
ウイスキー発祥の地と呼ばれているだけあり、ウイスキーの歴史がとても濃いですね!
- スコッチウイスキーの大きな特徴:ピートを使って麦芽を乾燥させる
- 6大産地:スペイサイド、ハイランド、ローランド、アイラ島、アイランズ、キャンベルタウン
- 密造時代に確立された製造方法:ピートで麦芽を乾燥させる・樽で熟成させる